経営管理システムとは何か(1)
第1回 「経営管理システム」についての認識の違い
経営管理システムの構築や改編について意見交換を行うと、人それぞれに「経営管理システム」という概念についてのイメージが微妙に異なり、議論が噛み合わないことがよくあります。例えば、予算管理などの計数的な管理の仕組みだけをイメージする人もいれば、事業そのものについての管理を想定する人もいます。また、経営管理のなかに「計画と統制」という概念がありますが、「計画」といったときに「戦略と実行計画」の両方をイメージする人もいれば、実行計画」だけをイメージする人もいます。あるいは、「統制」といったときに、それを「測定・フィードバック・修正行動」からなる「制御」だと考える人もいれば、制御に加えて「評価」といった動機付けに関する要素も含んでいると考える人もいます。さらには、事業を行うための仕組み的なものだけではなく、「組織文化」や「リーダーシップ」といった形式化しにくい経営の諸要素も経営管理システムの一部だと考える人もいます。
このような理解のズレが生じるのは、「経営管理」あるいは「経営管理システム」という概念が、その内部にどのような構成要素を持ち、それらの構成要素をどのようにグルーピングすべきかについて、人それぞれが異なる認識を持っているからではないかと推察します。例えば、「システム」という概念ひとつとってみても、それはアウトプットを生み出すための「有機結合した手段のすべて」だと考える人もいれば、より限定的に公式のルールや手続きなどの「目に見える仕組み」だけを意味すると考える人もいます。
そこで、我々あこうは、このブログを通じて「経営管理システムとは何か」というテーマであこうなりの認識を述べてみたいと思います。まず、原点に立ち返り、第2回では「組織における経営管理」、第3回では「経営目的」について整理します。次に第4回から第7回では、経営管理とはどのような要素から構成されるのかについて議論します。第4回から第6回は「経営管理の仕組みの設計」に関する内容で、「組織構造の設計」「計画立案と統制システムの設計」「業績評価システムの設計」というテーマで議論します。第7回は「経営管理の仕組みの運用」に関する内容で、「組織文化・リーダーシップ・人材育成」というテーマで議論する予定です。そして、第8回はまとめとして「経営管理システム」についてあこうの考えを、「マネジメント・コントロールシステム」と呼ばれる経営学上の理論と対比しながら述べたいと思います。少し結論を先取りしていえば、あこうの考える経営管理システムとは、経営目的を達成するための経営管理の諸要素のうち「仕組みの設計」に該当する部分であると捉えています。