経営管理システムとは何か(2)

第2回 組織における経営管理

個人事業にしろ、複数の構成員を内部に持つ組織にしろ、その存在意義は「ビジネスを通してステークホルダーヘの貢献を果たすこと」といえるでしょう。また、組織構成員にとっての「自己実現の場」としての役割もあります。ただし、これらの経営目的を達成するには、利益を出して事業を継続しなくてはならないため、そこに経営管理の必要性が生じます。例えば、個人事業主であれば、事業主自らが戦略を描き、実行計画をたて、スケジュール管理し、必要に応じ行動を修正する、というように経営をセルフコントロールするでしょう。また、自ら事業を開始したわけですからモチベーションは十分にあるはずです。

ところが事業が拡大し、組織として事業を行うようになると、より高度な経営管理の技術が必要になります。組織による事業が個人事業と大きく異なるのは業務が「分業」される点です。分業によって業務の専門性が高まり、効率化が期待できますが、一方でそれぞれの仕事がバラバラに行われないよう「協働」する必要が生じます。組織における経営管理が追求するのは、経営目的の達成に向けた人々の「協働」なのです。

分業体制のもとでよりよい協働がなされるためには、上司と部下のタテの連携と部下同士のヨコの連携がスムーズに行われることが鍵となります。これを一般に「調整」と呼びますが、調整をスムーズに行うためには、第一に、上司から部下への指示命令系統が明確であること、第二に、調整負荷を軽減するために、あらかじめ計画をたてて業務を進めること、第三に、タテの調整が上司により行われるだけでなく、部下の自主的な調整力が働くよう動機づけすること、第四に、ヨコの調整が部下の共通の上司を通して行われるだけでなく、部下同士でも行われるようなコミュニケーションの場や組織文化、組織風土をつくることです。つまり、組織における経営管理とは、人々の「協働」を促進するような「仕組み」を設計し、その設計した仕組みを日常業務の中で適切に「運用」することといえるでしょう。