経営管理システムとは何か(5)

第5回 計画立案と統制システム

経営管理の仕組みの設計における二つ目の要素は、「計画立案と統制システムの設計」です。話がやや長くなるため、①計画立案と②統制システムに分けて議論します。

①計画立案
計画を立案する第一の目的は、環境変化に適合することに他なりません。しかし、計画にはもう一つの重要な役割があります。それは、分業に伴う調整の負荷を軽減することです。計画立案自体が調整を含む業務であるため、PDCAのD(Do)の段階で必要になる調整業務を計画段階で事前に済ませておくことができます。

このように組織設計の目的は、一義的には組織内に分業と調整の体系をつくることなのですが、組織は戦略の実行手段としての側面を持つため、戦略との整合性に留意する必要があります。例えば、原材料の集中購買など規模の経済を追求する事業戦略を採用したならば、専門性を活かせる機能別組織を採用し、市場ニーズや技術の変化が速い環境での適応力を高めるならば事業部制組織を採用するといったイメージです。
ただし、計画を効率的に策定するには若干の工夫が必要になります。例えば、まず中長期計画を策定し、その初年度を「実行計画」として具体化するというように計画を構造化して立案する、というのはよく見る方法です。
あるいは経営戦略に関して言えば、創業当初は創業者が自身の頭の中で組み立てていれば事足りていたはずです。しかし、事業が拡大し権限移譲が進めば、経営戦略も構造的に策定する必要性が生じます。例えば、会社の事業領域に関する「企業ドメイン」や「事業ドメイン」は経営トップ層で決定し、その枠組みのもとで営業・技術・生産といった下部組織が機能別戦略(あるいは部門方針)を策定するという構造化もよく採用される方法です。そしてこの経営戦略の立案とフォローを「決まったタイミング・メンバー・様式」で標準化して実施するのであれば、それは「戦略計画」と呼ぶべきでしょう。

また、計画策定と同時に設定する必要があるのが、到達すべき日標値(Key Performance Indicator)です。会社全体としてのKPIを何にすべきか、細分化された下部組織にふさわしいKPIは何かを決定する必要があります。日本企業の多くが導入している方針管理や米国からの提案であつたバランスト・スコアカードは、KPIを最大限活用しながら戦略計画や実行計画を推進させようとする試みに他なりません。

統制システム
次にC(Check)とA(Action)に話を移しますが、Checkとは実行(Do)が計画(Plan)どおりに進むよう現状を「測定・フィードバック」することを意味し、A(Action)とは実行が計画どおりにいかなかった場合の是正措置を意味します。そして、このCとAをまとめて「統制(または制御)」と呼びます。計画の進捗状況や目標値の達成状況を適宜把握し、統制活動を行う必要があることは個人も組織も同じです。ただ、その際に使用する指標は、計画段階で設定した指標でなくては意味がないので、この指標が結節点となり「計画立案」と「統制」はセットで考えるべき経営の要素なのです。